私は現在、台湾の高雄にある補習班(塾)、櫻花日語学園で日本語教師をしております。私が日本語教師になるまでの経緯をお話しさせていただきたいと思います。
●大学時代、台湾に関心を持つ
十代の頃の私は、夢もない希望もない毎日をなんとなく過ごしているだけ。「最近の若者は」と言われるような若者の一人でした。そんな私の人生を大きく変えてくれたのは台湾との出会いでした。台湾で出会った方々は、そんな夢も希望も自信をも失くした私に「日本人はすばらしい民族だ。自信を持っていいんだよ。大丈夫!」そう言ってくださいました。自分では気付かずにいましたが、きっと心の奥でずっと誰かに言って欲しかった言葉だったのだと思います。私は涙が止まりませんでした。
台湾の方々から、日本人としての自信、誇りなど、大切なことを教えていただきました。こんなにも大切なことを教えてくれた台湾に何かできることはないか、私は将来台湾で働きたいという夢を持ち始めました。
●JET日本語学校日本語教師養成講座に通う
台湾で働きたい!でも何から始めたらいいのかが分からず悩んでいたとき、幸運にも、知人からJET日本語学校日本語教師養成講座のパンフレットをもらいました。それまで日本語教師という職業を知りませんでしたが、「これだ!」と魂が震えるような感覚になったことをいまでも覚えています。
JET日本語学校日本語教師養成講座では、日本語のおもしろさ、難しさなど多くのことを教えていただきました。中でも特に印象的だったのは、「教壇に立てば全人格を問われる」という言葉でした。この言葉は心に深く響きました。私のような人間が「先生」と呼ばれてもいいのか。自信が全くありませんでした。日本語教師は様々な経験が武器になるということからも、日本語教師から少しの間離れたところに身を置いて自分を高めよう。そして、自分に自信が持てるようになったとき、日本語教師として教壇に立とうと考えました。
●自衛隊入隊
これらの動機から、その時の私は自衛隊への入隊が一番の方法だと考え、大学卒業と同時に1任期2年間の陸上自衛隊へ入隊しました。
多くの苦しみを通して、自分を鍛えたいと自分で望んで入隊したのですが、恥ずかしながら、目の前の現実から逃げ出したくなったこともありました。そんな中であんなに夢見ていた台湾での日本語教師になることを全て忘れてしまったこともありました。
しかし、絶対に逃げることだけはしたくない。どうしても台湾に行きたい。その気持ちを何度も自分に言い聞かせ、自分を奮い立たせました。多くの方の支えの中で、無事、2年間の陸上自衛隊を任期満了することができました。
●ついに!念願叶い、台湾で日本語教師に!
以前、井上校長先生からのご紹介で、いくつかの台湾の日本語教育機関の授業見学をさせていただいたことがありました。自衛隊退職後、櫻花日語学園の日本語教師募集に応募したところ、ありがたいことに採用され、現在は夢にまで見た台湾で、日本語教師生活を送っております。
今は、多くの失敗を繰り返しながら、教案と向き合う毎日です。日本語教師の仕事の大変さを日々感じておりますが、念願の日本語教師になれた喜びから、この大変さも大きな喜びを伴った大変さです。学生さんから学ぶことも多く、本当に毎日勉強になっています。
2年間の自衛隊生活が直接授業に関係することはありませんが、自衛隊生活で体得した自分に負けない強さなどは、間接的に役立っているかなと感じています。
台湾との出会いから5年、私にはまだまだ多くの課題がありますが、日本語教師の夢を諦めなくて本当によかったです。
また現在でも、JET日本語学校での「たまご先生」時代にお世話になった生徒さんとの交流が続いており、こちら台湾での「JET日本語学校卒業生の食事会」に誘っていただくなど、大変よくしていただいております。慣れない外国生活で本当に心の休まる時間です。
多くの方々の支えのおかげで今の私がいるということに毎日感謝の気持ちでいっぱいです。この気持ちを力に変えて、これからも日本語教師としての自分を高めていきたいと思っています。
(2007.12月書) |